コーヒーの歴史
~回教僧の秘薬から世界の飲物へ~
家庭からカフェ、レストラン、ホテルなど様々な場所で飲まれているコーヒー。
今では当たり前の存在となっているコーヒーの起源、軌跡を発見する旅へ。
あなたにとってのコーヒーがより身近で味わい深い存在になるきっかけになれば幸いです。
野生の植物だったコーヒー
植物としてコーヒー(コフィア属)はすべてアフリカ起源で約3000万前には存在したと言われています。
コーヒーが歴史の表舞台に現れたのは15世紀半ば。
飲用として常用し始めたのはアラビア半島のモカ・アデン近辺で、対岸のエチオピアから持ち込まれたと推測されてます。
◆コーヒーにまつわる有名な逸話
・シェイク・オマールの伝説
・カルディの伝説(山羊飼い発見伝説)
・ゲマレディンの逸話
シェイク・オマールの伝説
13世紀、イエメンのモカで流行していた疫病。アラビアの僧侶“シェイク・オマール”は民衆とともにモカ領主の娘の疫病を祈祷で治療。その最中に娘と恋に落ち、怒った領主からオウサブという山中に追放されてしまいました。
空腹に耐えながら山中をさまよっていると、美しい一羽の鳥が赤い木の実をついばんでは陽気にさえずっているのを目撃します。
オマールはこれをアラーのご加護と思いその実を食べてみますが、美味しそうな見た目とは裏腹に、大変苦かったため、鍋で煮詰めてスープにして飲んでみると、不思議なことに全身の疲れが癒され、力がみなぎってきたのです。
オマールは自身を救ってくれた神からの贈り物である赤い実のスープで多くの病人を救い、再度聖職者として街へ戻ることができました。
その赤い実こそがコーヒーの実だったと言われています。
カルディの伝説
アビシニア(現在のエチオピア)の南西部にあるカファと呼ばれる地域の山間で放牧生活を送る、山羊飼いの少年カルディ。
とある日、普段はおとなしい山羊たちが夜通し興奮して跳ね回りだしたのです。
不審に思った少年が注意深く観察してみると、山羊たちが森に生えている赤い木の実を食べていることを発見し、おそるおそるその実を口に入れてみました。
するとどうでしょう。口の中に広がる甘酸っぱさと体中にみなぎるチカラ、頭は冴えわたり、気分も爽快になるではありませんか。
カルディはこの実を近くのイスラム寺院に持っていきますが、修道僧は悪魔の実だと言って火の中に投げ込んでしまいます。
ところが辺りに広がる香ばしい薫りに修道僧も火を消して食べてみると、眠気がとれ、頭が冴えわたり爽快な気分に。
その“魔法の実”の噂はまたたく間に他の寺院にも伝わり、眠気ざましの妙薬として広まったと言われています。
ゲマレディンの伝説
舞台は15世紀のアデン。イスラム律法学者だったゲマレディン(ザブハーニー)は日々研究に明け暮れる日々。
エチオピアの旅を終えたゲマレディンはついには病気を患ってしまいます。
一向に良くなる気配のない体調を心配した彼は、エチオピアを旅していた時に現地の人々に飲まれていたコーヒーという未知の飲み物を思い出し試してみました。
すると、みるみるうちに体は回復し、さらには頭をすっきりさせて眠気を追い払う効果があることに気づいたのです。
ゲマレディンは修道僧たちにコーヒーを勧めて回りますが、これがきっかけとなり、学者、職人、暑さを避けて夜旅する商人にも伝わり、ほどなくアデン一帯にコーヒーの飲用が広まったそうです。
コーヒーの豆知識
〜 コーヒーチェリーとは? 〜
コーヒーノキ(コーヒーの木)は約2-3年でジャスミンのような香りのする白い花をつけます。
受粉後、数カ月で実が大きくなりはじめ、最初は緑色で固く楕円形の実が完熟することで真っ赤で丸い形状に。
塾れた実は色や形がサクランボに似ていることから『コーヒーチェリー』と呼ばれるようになりました。
コーヒーの花
コーヒーの実
〜 コーヒー豆は「豆」じゃない?〜
私たちが「コーヒー豆」と呼んでいるものは赤いコーヒーチェリーそのものではなく、実の中に向かい合わせで入っている2粒の種子のことです。
※1粒のみの場合や3粒入っているものもあります
コーヒーチェリーの構造は、外側から外皮、果肉、内果皮(パーチメント)、銀皮(シルバースキン)、種子となっており、この種子の外側の部分を取り除いたものを生豆(きまめ)と呼びます。
〜 コーヒーベルトって? 〜
数多くの生産地があるコーヒー豆。その日の気分に合わせた各地の味を愉しめるのもコーヒーの醍醐味。
これらの「良質なコーヒー豆を栽培する地域」には共通項目があるということをご存じでしょうか?
それは“コーヒーベルト”と呼ばれる赤道直下の熱帯地域に位置していること。
コーヒーは赤道をはさむ南北緯約25度のコーヒーベルト地帯で栽培されており、全世界の約60数カ国で生産・輸出されています。
コーヒー栽培に理想的な地域が細い帯状になって地球を横断し、ベルトのような形をしていることから『コーヒーベルト』と名付けられました。
コーヒー豆の4つの精製方法
コーヒーの果実は収穫後、種子を取り出して生豆にする加工を行います。
その行程を「精製」と呼び、精製方法はコーヒーの産地によってさまざまで、
精製した生豆を乾燥させることで保管が可能になります。
ここでご紹介する4つの精製方法は、
それぞれがコーヒー豆の品質や味わいに大きく影響しています。
ウォッシュド - 水洗式
新鮮な果実からまず果肉を除去し、パーチメントコーヒーの状態で乾燥させる、最も広く用いられている精製方法で、欠点豆が出るリスクが少なく、均一性があって質の高いコーヒー豆の生産が可能。
内果実に付着したミューシレージ(粘液質)を大量の水を使って洗い流し、乾燥棚に広げて乾かします。
主にコロンビアやグァテマラ、タンザニアなどで採用されており、ウォッシュドで精製されたコーヒー豆はクリーンな味わいが特徴です。
ナチュナル - 乾燥式
収穫したコーヒーチェリーをコンクリートやビニールシートなどに広げ、天日乾燥させて脱穀する伝統的かつ最もシンプルな方法。
「非水洗式」や「アンウォッシュド」とも呼ばれます。
水の少ない産地や、コーヒーチェリーを乾燥させる広い平地があるところではこの方法が採用されており、主にブラジルやエチオピアなどで行われています。
ナチュラルのコーヒー豆は何といっても果実味にあふれたフレーバーが特徴的。
果肉の香りや甘みが生豆に染み込み、フルーツのような甘酸っぱさと香りを感じられます。
パルプド・ナチュラル
ナチュラル(乾燥式)とウォッシュド(水栓式)の中間の精製方法。
コーヒーチェリーを水槽に入れて異物などを除去、果肉を取り除いてパーチメントコーヒーにし、ミューシレージ(粘液質)が付着したままでコンクリートなどに広げて天日乾燥を行います。
そのまま天日干しにすることで粘液質が持つ糖分や酸味が生豆に染み込み、甘みや透明感を感じられる味わいに。
ほとんど同じ精製方法の『ハニープロセス』がありますが、こちらは中米のコーヒー豆に対して使われ、コスタリカでは、粘液質を除去する割合によってさらにハニープロセスを4区分しています。
スマトラ式
マンデリンで有名なインドネシア・スマトラ島で行われる伝統的な精製方法で、現地では『ギリン・バザー』とも呼ばれています。
収穫したコーヒーチェリーの果肉を除去した後、パーチメント(粘液質)が付いたまま半乾きの状態にし、パーチメントを取り除いてから再度乾燥させます。
他の精製方法ではパーチメントを取り除くタイミングは出荷直前ですが、雨の多いスマトラ地域では早く乾かすため、乾燥の段階で脱穀を行います。
スマトラ式で精製されたコーヒーはスパイシーでハーブのようなエキゾチックな香味が特徴的。
コーヒーの起源や由来、豆知識にコーヒー豆の4つの精製方法を紹介させていただきました。
あなたにとってのコーヒーの存在がこれまでより少しでも身近に感じるきっかけとなり、
これからのコーヒー豆選びの参考となれば幸いです。
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